会長挨拶

第64回日本リウマチ学会総会・学術集会
会長 石黒 直樹
名古屋大学大学院 医学系研究科総合医学専攻
運動・形態外科学講座整形外科学 教授

学術集会長 石黒 直樹

第64回日本リウマチ学会総会・学術集会を、2020年4月23日から25日の3日間、東京、グランドプリンスホテル新高輪・国際館パミール・グランドプリンスホテル高輪において開催させていただきます。伝統ある日本リウマチ学会の会長を務めさせていただくことは、大変な名誉であると感じると共に、大きな責任も感じております。参加された方々にとり、実りある学術集会にしたいと考えております。ここで改めて、皆様のご理解とご支援をお願い申し上げる次第です。

第64回大会のメインテーマは、「明日へ架ける~Bridge to Happiness~」にさせて頂きました。

リウマチ学は、平成の時代、過去20年の間に長足の進歩を遂げました。治療成績の著しい向上は疾患に対する社会のイメージをも変えました。以前は、原因不明の難病と言われた関節リウマチも、新しい治療薬と早期から確実な治療方針に従うことで、予後が大きく改善することが示されています。そして、今ではこれらの新規治療の恩恵は炎症を伴う種々の周辺疾患にも拡大されつつあります。治療に難渋したリウマチ性疾患への治療アプローチが大きく変わろうとしているのです。この様な時期にリウマチ性疾患の治療に関わる医療者は新しい時代の到来を肌で感じることが出来ています。これは実に素晴らしいことであると思います。

しかしながら、疾患によって苦しんでいる患者さんの思いはどうでしょうか?我々は真の幸せ「病苦からの解放」を達成している訳ではありません。まして、現在の治療が素晴らしいものであるにせよ、すべての方に期待通りの効果が発揮されることはありません。まだまだ解決に至るには多くの課題があると言えます。症状のとらえ方ひとつ取っても、医療者と患者さんでは感じ方が違うという報告もあります。また、治癒の達成は未だに保証されている訳では無く、治療の中断は多くの場合、失敗に終わるという結果も報告されています。副作用、偶発する感染症など、これらの問題は未解決のままです。患者さんの高齢化に伴う心身の変化は治療上の大きな問題になってきました。

確かに、Evidence Based Medicine(EBM)を中心に進んできた治療が画期的な効果をもたらしたことは事実です。平均的なモデルで見ればその効果は歴然であり、疑う余地はありません。しかし、今は、その先を考えるべき時期に来ていると考えています。治癒が望めない現在、せめて個々の患者さんに最も相応しい治療を共に考えたいと。疾病に罹患することは常に不幸です。それでも、この不幸を乗り越えることは出来るかも知れません。疾病があっても、できうる限りの健康寿命を獲得してほしいと願っています。本学会が「患者さんに明日の幸せをもたらす治療」について医療者が考える機会を提供できる事を強く望んでいます。

医学はヒトに奉仕する学問であるという信念を私は持っています。患者さん個々に明日には今日よりもきっと良くなって、健康の幸せをもたらすことが医学の究極的な目標です。第64回大会では、参加者の皆様に「患者さんへ明日の幸せ」を届けるための方策を考える場所にしたいとおもいます。

私は軟骨代謝学を中心に基礎研究を行ってきました。そこで、関節症の治療という領域にもスポットを当ててみたいと思います。軟骨組織の理解無しには関節症治療の発展は望めません。関節リウマチに軟骨破壊が起こっていることが障害発生に大きく関わる事は明白ですが、高齢化社会の到来に伴い軟骨組織障害を伴う、関節症患者の増加は避けられない状況です。軟骨組織の障害、克服という課題も取り上げたいと思っております。

2020年の本学術集会は、平成から新しい元号にかわる初めての学会であり、更には日本という国を世界に発信するオリンピックイヤーに行われるという、歴史的な巡り合わせもあります。医学が他の自然科学と異なる最大の特徴は、人に寄り添い、ヒトを治すことです。それをもう一度この学会を通じて確認させて頂き、世界にも発信できたらと思っております。

最後になりますが、関係各位の、多大なご理解とご協力を今一度賜りたく、お願いいたします。